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第1話 「雨漏りは鰹の季節」

今日はお客さん少ないですね

そうだなー。雨だし、仕方ないかな

ガラガラ~

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いらっしゃいませ!

あ、いいですか?一人なんですけど

どうぞどうぞ~カウンターのお席へ。お飲み物何にしますか?

じゃ、生ビール

はい、ありがとうございま~す!マスター生一丁!


(ぐびぐびぐび)はあ~

お料理は何になさいますか?

刺身なにかいいのある?

今日は鰹が入っていますよ。タタキでいかがですか?

おお、いいねえ、じゃ、鰹タタキで


はあ~

お客さん、初めてですよね。ため息つかれて、どうなさったんですか?

実は私、この隣の隣の清水ビルのオーナーなんです。清水といいます。

ああ!あのビル...

あの、かなり古い...あ!ごめんなさい。

いいんです。実際古いですから。(苦笑)
あのビルは私の父がもう30年も前に建てたものなんです。昨年父が亡くなりまして引き継いだんですが、この雨で雨漏りするって連絡があって...

はい、おまちどうさま~鰹タタキです。


...それで雨漏りは止まったんですか?

いや、それが、お願いした工事会社は原因がわからないから止められないっていうんです。建物が古すぎてわからないって...

なんか想像できる...あ、すいません

今回共用廊下なので、とりあえず応急処置したんですが、今までにも何度か雨漏りあって、その都度応急処置で、根本的に解決できてないみたいなんです。
ああ、鰹うまいですね~

その工事会社は何か特別な調査を提案してきてます?

いやー、毎回漏れていると思われるところに、処置をしていきます。調査って言っても外から見ているだけですね。

もっと詳細に調査をする場合は、特殊な機械や装置を使うので、有料のことも多いし、そもそもそういう機械を持っていない工事会社は調査もできないので、対処だけになってしまうことも多いんですよね。

えー!じゃあ、根本的な原因がわからないまま修理するの?

そうなっちゃうね。

お金がかかってもきちんと調査して根本的に解決すれば、そのあと困らないのに。

実は、お金をかけて調査して根本的な原因がわからないときもあるんです。たとえば散水調査と言って実際に水を撒いて調査する方法は、お金もかかるけど、手間暇がかかる上に、確実に特定できるか?といえばそうでもないんですよ。実際に原因になっている個所のあたりをつける作業というのは、雨仕舞などの知識と、建物の特徴を見極める力が必要で、経験がものを言うんです。

マスターの建物豆知識

散水調査とは?

原因と思われる部位に実際に水をかけてみて雨漏りの再現を試みる調査で、通常目視による調査の後、原因が判明しない場合に行います。ある程度あたりをつけた上で、そこにピンポイントで水をかけ、雨漏りが再現するかどうかを確認していく作業になります。


壁のシミは漏水が進んでいるサイン

料理も一緒で、例えば、鰹が春から夏にかけてが旬だけれど、よい鰹が手に入っても、調理する人が、鰹についての知識がなかったり、調理方法を知らなかったりしたら、おいしく食べられないですよね。それと同じです。今日はタタキで出しましたけど、この季節の鰹は戻り鰹と比べて脂がのっていないので、刺身よりタタキの方がいいんですよ。

…一口に雨漏りといっても、原因究明はむずかしいんだ…と言ってこのままってわけにもいかないし。

今の工事会社は調査してもらえないんですかね..?

まずは雨漏りや漏水の調査を専門にしている人がいる会社にお願いしてみてください。赤外線調査なんかもしてくれるところがありますから。

マスターの建物豆知識

赤外線調査とは?

赤外線カメラによる、温度調査。水の漏れているところは温度が低いため、外見上わからなくても温度差で漏水箇所を判定できる。

マスターありがとう!早速探してみるよ!ごちそうさま!

どうもありがとうございました~!

(清水さんを見送る)

まだまだ他にもありそうですね...清水ビル。 きっとまた来てくれそうですね!


いやー、まだ雨降ってるけど気持ちは少し晴れたな。帰ったら早速雨漏り調査してくれる人を探してみよう。....あれ?この居酒屋、普通の居酒屋だったよな...?なんでマスターあんなに詳しいんだろう?

<第1話 完>

※本ストーリーはフィクションであり、実在の人物・団体との関係ありません。